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『ポーの一族』展と『王様と私』
2019-07-31 Wed 22:00
『ポーの一族』展とミュージカル『王様と私』のはしご。


ポーの一族

『ポーの一族』展は、萩尾望都さんの原画がたくさん展示されていて嬉しかったです。もちろんホワイトやテープみたいなもので修正しているんですが、どうしてペンでこんなにのびやかな線が引けるんだろう、と見とれてしまいました。ホワイトの使い方で面白かったのは、一本の線を引いてから、ホワイトを塗って点線にする、というもの。

カラー原稿も見ることが出来て良かった。ただ、原色の赤、青、緑を使った色彩は、個人的にはあまり好きではないのですが。カラーイラストについては、必ずと言っていいほど「返却希望」と書かれていて、当時はわざわざ断りを入れないと破棄されてしまったのかなと思いました。


王様と私

『王様と私』は、渡辺謙さんが出ていたので観に行きました。渡辺謙さんは頑張って歌っていたけれど、英語が分かりづらかった。やはり、声量がミュージカル俳優には及ばないかな、とも。内容的に面白かったのは、王様の妻の一人が『アンクル・トムの小屋』を読んでいて、それを基にお芝居を演出するのですが、それがどうしてもシャム風の解釈、表現(歌とか)になっている、というところ。
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高畑勲展
2019-07-12 Fri 21:00
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「高畑勲展」に行く。東映時代の「ぼくらのかぐや姫」の企画書や、「ホルス」の制作資料(緊張感の変化の表「テンション・チャート」や宮崎駿さんの意見書)など貴重な展示が多数。「パンダコパンダ」「アルプスの少女ハイジ」「母を訪ねて三千里」「赤毛のアン」の宮崎駿さんによるレイアウトも盛りだくさん。なぜか「ルパン三世」については全く扱われず。

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東映時代の「ぼくらのかぐや姫」の案では、かぐや姫が自分の手元から離れて行ってしまうことに危惧を感じた翁が、かぐや姫を殺してしまう、という思い切った筋書きが非常に斬新だった。他にも、難題を出された5人の求婚者が苦心するところへ、かぐや姫が非常に冷淡な態度を見せる、という設定書きもあったように記憶している。

「太陽の王子ホルスの大冒険」は展示全体の中で、文章も絵も資料が最も多く充実していた。時間軸に沿ったドラマの緊張感の曲線のグラフ「テンション・チャート」や、緊張感の変化を「開」「閉」「動」で表現した表が非常に面白かった。歌詞の流れに合わせた映像の変化を書いた表も音楽に造詣の深い高畑さんなればこそ。トップダウンではなく、スタッフ全員が民主的に参加する、という制作のコンセプトも新鮮だった。

制作の遅れから中止になった時、会社の上層部とのやり取りの書簡も生々しかった。これまでフルアニメーションで制作してきたものを、途中から作画枚数を減らすことは出来ない、もともと少ない作画枚数で作られたリミテッドの作品とも別個のものになってしまう、といったメッセージを覚えている。(私は見ていなかったのだが、期日までに完成させなければ、高畑さんと作画監督の大塚さんを首にする、という会社側のメッセージもあったとのこと。恐ろしい…。)

宮崎駿さんの意見書も面白かった。ホルスがたどりつく村を、守に値する場所として描くためには、村の家々は中心の広場の周りに円形に並んでいた方が、点在して存在するよりも適している、という意見があったと記憶している。

「パンダコパンダ」以降の展示は、文章もあるが徐々に絵コンテやレイアウト、原画などの絵が多くなる。レイアウトとして展示された絵と仕上げのセル画の内容が、きちんと対応しているところに展示側のこだわりを感じた。「ハイジ」「マルコ」「アン」で展示されている宮崎駿監督のレイアウトが素晴らしい。

「パンダコパンダ」では、宮崎駿さんのレイアウトが楽しい。まだレイアウト用紙なるものが生まれていなかったため、作画用紙に赤い枠線を自分で引いていた、というのが新発見。
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「アルプスの少女ハイジ」では一年間のそれぞれの話数における簡単な筋書きが残っていて興味深かった。個人的には、オープニングのハイジとペーターが手に手をとってスキップするアニメーションのラフとクリーンアップの比較が印象的。ラフ原画は森康二さんで、クリーンアップが小田部羊一さんなのだが、森さんの描く絵の等身が、小田部さんのものと比べて凄く低い。全然合ってない。やはり森さんは森さんの絵になってしまうのだなあと思った。

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宮崎駿さんのレイアウトで特に印象に残っているのが、モミの木の枝を周りに侍らせて、中心に上から見た視点で小さくハイジとクララがいる、というもの。これは図録には載っていなかった。残念。(似たような構図で、おばあさんとクララというのは載っていたが。)

「母をたずねて三千里」では、イタリアの街を描いた美術(背景画)が素晴らしかった。
筆のタッチが見えるところが良い。宮崎さんのレイアウトもたくさんあったのだが、図録にほとんど載ってなくて、これも残念。宮崎さんによるアメデオの作画が可愛い。

「赤毛のアン」では、原作でのエピソードがそれぞれ何月ごろの出来事か書き記した表があって、高畑さんのこだわりを感じることができた。オープニングのレイアウト(これも宮崎駿さん)を見られたのも良かった。キャラクターデザインの近藤喜文さんは「風変わりな目立つ顔立ちで感じやすく、しかも骨相から言えば将来魅力的で知的な美人になる顔」という難題に取りくんでいるが、少女の方は良いけれど、大人になってからのアンの造形はちょっと固い感じが。とはいえ、自分で描いてみろと言われると、「無理です!」としか言いようがないのだけれど。

「じゃりン子チエ」。大阪の下町風景が伝わってくる背景画。石版画のようなタッチを追及したらしいが、私には他の作品の風景画とどう違っているのか、いまいち分からず。(すんません。)

「セロ弾きのゴーシュ」は一人の作画、一人の美術で作られた作品だと初めて知った。作画の才田俊次さんはチェロの演奏方法まで学んだとか。何度も中断があった作品。椋尾篁さんの水墨画風美術も美しい。「インドの虎狩り」の演奏シーンでの、曲の流れに対応した場面の説明書きが興味深い。

「平成狸合戦ぽんぽこ」。様々なタッチで描かれた百瀬義行さんと大塚真治さんの膨大なイメージスケッチが、壁一面にびっしりと印刷されていたのが印象的。楽しい。

「ホーホケキョ となりの山田君」。大好きな作品。作画や美術の緻密さでリアリティを持たせる表現から一転、単純な線と水彩風の塗を追及した革新的な表現方法。単純な造形でありながら、細かい動きを沢山拾っていて、キャラクターの存在にリアリティを感じさせる。原作漫画の線そのものを再現していることが凄い。

他にも「火垂るの墓」の原作を切り張りしたノート、「かぐや姫の物語」の原画など見ごたえのある資料多数。展示は10月6日まで。まだ行けてない方は是非!

追記:ミュージアムショップには、「アニメーションのひみつ」全三巻が並んでいました。
私も関わった本なので、嬉しい。
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クルクルパラパラ 動くアートの秘密展
2019-07-09 Tue 22:54
島根県の浜田市世界こども美術館にて「クルクルパラパラ 動くアートの秘密展」が7月13日から始まります。「ぱらぱらマンガ友の会」の一員として、私の過去の作品『ニョキニョキ』も展示予定。島根の方は是非ご覧ください。会期は9月23日まで!

My flipbook "Nyoki Nyoki" will be exhibited at Hamada Children's Museum of Art in the program, "Secret of Moving Art" from July 13th to Sept.23rd. The museum is located in Shimane Pref. so those of you who reside in Shimane or who have a plan to visit there, please go to the exhibition if you are available.

浜田市世界こども美術館「クルクルパラパラ 動くアートの秘密展」

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